「桃鉄(桃太郎電鉄)」というゲームをご存知でしょうか。 サイコロを振って日本全国を巡り、物件を買い集め、資産総額日本一を目指す、あの国民的ボードゲームです。
子供の頃、友達と集まってワイワイ遊んだ記憶がある方も多いでしょう。 しかし、大人になった今、改めてこのゲームに向き合うと、背筋が凍るような事実に気づかされます。
「これ、ただのゲームじゃない。資本主義社会の残酷さと、人生の攻略法そのものではないか」
順調にいっていたのに、たった一度の不運で借金地獄に落ちる理不尽さ。 コツコツ貯めた資産が、後半に爆発的な力を発揮する複利の効果。 そして、目先のゴールに囚われて自滅する人間の心理。
私は断言します。桃鉄で勝てる思考法を身につければ、現実の人生(キャリア形成や資産運用)でも間違いなく勝つことができます。 今回は、私が桃鉄という「人生のシミュレーター」から学んだ、現代社会を賢く生き抜くための3つの鉄則をお伝えします。
鉄則1:ゴールを急ぐな。「ガス欠」は負けの始まり
桃鉄初心者が必ず陥る罠があります。それは「誰よりも早く目的地に着くこと」に固執しすぎることです。
手持ちの資金が少ないのに、無理をして高額な「急行カード」や「特急カード」を買い込み、全力でゴールを目指す。 確かに、最初の数回は一番乗りできるかもしれません。しかし、そんなプレイは長続きしません。中盤に差し掛かる頃にはカード(リソース)が尽き、サイコロ運に見放された瞬間、貧乏神をなすりつけられ、為す術もなく最下位へと転落します。
これを現実の仕事に置き換えてみましょう。 かつての私がまさにそうでした。
「とにかく早く成果を出したい」「誰よりも早くタスクを完了させたい」 そんな焦りから、仕事において「丁寧さ」よりも「スピード」を最優先にしていました。確認作業を飛ばし、準備不足のまま走り出す。まるで、目的地しか見ていない桃鉄プレイヤーです。
その結果、何が起きたか? 「ガス欠」と「事故」です。
スピード重視で仕上げた資料にはミスが散見され、クライアントからの信頼を損ないました。その修正対応に追われ、精神的な余裕(カード)もなくなり、結果として誰よりもゴール(プロジェクト完了)が遅くなってしまったのです。 「急がば回れ」とはよく言ったものですが、桃鉄はもっとシビアに教えてくれます。「手持ちのカード(準備・品質)を整えずに突っ走る社長は、いずれ破産する」と。
今は意識を変えました。 目先のゴールに飛びつく前に、まずは手元を見る。 「十分な確認時間は確保できているか?」「リスクヘッジのカードはあるか?」 一つひとつ確実に進めること。一見遠回りに見えるその「丁寧さ」こそが、ミスなく完遂し、最終的に誰よりも高い評価を得るための最短ルートなのです。
鉄則2:序盤の「農林物件」をバカにするな
桃鉄の醍醐味はなんといっても物件購入です。 ゲーム序盤、まだ資金が1000万円しかないような苦しい時期に、何を買うか。ここでプレイヤーの性格が出ます。
一発逆転を狙ってハイリスクな投資をする人もいますが、最終的に勝つのは「利益率は低いが、確実に収益を生む物件(農林物件や食品物件)」を地道に買い集めた人です。 1件あたりの収益は微々たるものです。しかし、これらが10件、20件と積み重なると、ゲーム後半に凄まじい威力を発揮します。何もしなくても毎月チャリンチャリンとお金が入ってくる、盤石な「不労所得システム」が出来上がるからです。
これを現実の人生、「自分株式会社」の経営に置き換えてみてください。 あなたが今、コツコツと買い集めている「農林物件」は何ですか?
私は現在、以下のルーティンを「将来の自分への投資物件」として積み上げています。
- 金融資産への種まき: 月10万円のNISA積立投資
- 知識資本への投資: 22時半以降はスマホを封印し、読書に没頭する
- 健康・発信資本への投資: 毎朝5時に起床し、ブログ執筆と筋トレを行う
はっきり言って、地味です。 今日読書をしたからといって、明日給料が上がるわけではありません。今日筋トレをしたからといって、明日ムキムキになるわけでもありません。 桃鉄の「1000万円の田んぼ」を買うようなもので、即効性はゼロです。
しかし、私は知っています。 この「地味で退屈な積み上げ」こそが、10年後、20年後の決算において、他者と圧倒的な差をつける「莫大な含み益」になることを。
多くの人は、すぐに結果が出ないことに耐えられず、途中でやめてしまいます。あるいは、「一撃で稼げる!」といった怪しい話(桃鉄でいう「とっかえっこカード」狙いのギャンブル)に飛びつきます。 ですが、人生という長期戦において最強なのは、安くて地味な物件を、誰よりも早く、誰よりも長く持ち続けた人なのです。
鉄則3:「キングボンビー」は必ず来る。だから「99年」で考える
そして、桃鉄最大にして最悪の教訓。それが「キングボンビー(貧乏神)」の存在です。
どれだけ完璧な戦略を立て、どれだけ真面目に物件を積み上げても、サイコロの目が悪ければ彼に取り憑かれます。 そして、一瞬にして全財産を吹き飛ばし、借金を背負わせ、カードを叩き割っていきます。 「こんなの理不尽だ!」「真面目にやるのが馬鹿らしい!」 コントローラーを投げ出したくなる瞬間です。
しかし、これこそが「リアル」ではないでしょうか。
現実世界でも、理不尽な不幸は突然やってきます。
- 会社の業績悪化によるリストラ
- 予期せぬ病気や事故
- 信頼していた人の裏切り
- 世界的な不況やパンデミック
私たちが生きる世界には、キングボンビーが潜んでいます。努力ではどうにもならない強制イベントが必ず発生します。 その時、どうやって心を保ち、再起を図るのか。
私が桃鉄から学んだマインドセットは、「99年プレイ中のたった1年の出来事だ」と割り切る視点です。
桃鉄を最長設定の99年で遊んでいれば、1度や2度、破産寸前まで追い込まれる年があります。でも、そこでゲームをリセットしてはいけません。 人生が80年、90年続くとしたら、今の苦難は全体の「ほんの1〜2%」の期間に過ぎないのです。
「今年はキングボンビーがついている年だな。まあ、そんな年もあるか」 「生きていれば、そのうち徳政令カード(借金帳消し)が出るだろう」 「今は耐えて、次のチャンス(目的地)のためにカードを集めておこう」
このように、視点を「今この瞬間」から「一生涯(99年)」にズームアウトさせること。これが、理不尽なトラブルに遭遇した際のメンタル防衛術です。
「人間万事塞翁が馬」という言葉があります。 一見不運に見えることが、後になって幸運のきっかけになることもあります。桃鉄でも、貧乏神になすりつけられたおかげで、他プレイヤーからマークされず、裏でこっそり力を蓄えて逆転優勝することがあります。
何が起こるかわからない。だからこそ、腐らず、諦めず、淡々と次のサイコロを振る。 その「継続する力」さえあれば、一時的なマイナスは必ず取り返せます。
まとめ:あなたの手の中にあるサイコロを振れ
桃鉄と人生の共通点。それは、「自分でコントロールできること(戦略)」と「コントロールできないこと(運)」が混在しているという点です。
サイコロの目はコントロールできません。キングボンビーの出現もコントロールできません。 しかし、「どの物件を買うか」「どのカードを使うか」「どこへ向かうか」は、すべてあなたの意思で決められます。
- 焦らず、手持ちのカード(準備)を整えること。
- 地味な習慣(農林物件)をコツコツ買い集めること。
- 不運に見舞われても、「長い人生の誤差」と割り切って進み続けること。
この3つの戦略を持っていれば、どんなに不確実な時代でも、あなたは「人生」というゲームを楽しみ、勝ち抜くことができるはずです。
さあ、明日もまた朝5時に起きて、自分だけの「優良物件」を積み上げに行きましょう。 次の目的地は、もう決まっていますか?

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